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日本語の「この・その・あの・どの」は、単に「これ・それ・あれ・どれ」に相当する違いだけではありません。名詞が誰の領域にあるのか、また、その情報が直前に話題に出たものなのか、それとも話し手と聞き手がもともと知っているものなのかも関係します。「この」は話し手に近いもの、「その」は聞き手側にあるものや前の文脈を受ける場合、「あの」は話し手と聞き手の両方から離れたものを指すことが多く、共通の記憶を呼び起こす場合にも使えます。「どの」は、特定の範囲の中からどれなのかを尋ねる表現です。
4つとも必ず名詞を後ろに伴い、名詞を省略する場合は「これ/それ/あれ/どれ」に変える必要があります。まず「位置」と「情報がどこから来たのか」を分けて考えれば、「その」と「あの」を中国語の「那個」だけで判断する必要がなくなります。
日本語の「この・その・あの・どの」とは?後ろには必ず名詞が必要
「この・その・あの・どの」は日本語の連体詞で、後ろに続く名詞を直接修飾します。最もよく見られる形は「この本」「その店」「あの人」「どの電車」です。
「これ・それ・あれ・どれ」のように単独では使えません。名詞を口に出さない場合は、「これ/それ/あれ/どれ」に変える必要があります。
| 指示詞 | 基本的な意味 | 基本的な位置 | 例 |
| この+名詞 | この…… | 話し手に近い | この本 |
| その+名詞 | その…… | 聞き手に近い | その本 |
| あの+名詞 | あの…… | 話し手と聞き手の両方から離れている | あの本 |
| どの+名詞 | どの…… | 選択肢について尋ねる | どの本 |
- 例文:この本は日本語の教科書です。
かな:このほんはにほんごのきょうかしょです。
意味:この本は日本語の教科書です。
本が話し手側にあるため、「この本」を使います。 - 例文:そのかばんは誰のですか。
かな:そのかばんはだれのですか。
意味:そのかばんは誰のものですか。
かばんが聞き手の近くにある場合、話し手は「そのかばん」と言います。 - 例文:どの電車に乗ればいいですか。
かな:どのでんしゃにのればいいですか。
意味:どの電車に乗ればいいですか。
「どの」の後ろでは、何について尋ねているのかを示す必要があるため、「どの電車」とします。
日本語「この・その・あの・どの」の使い方|4つの指示詞はすべて名詞と一緒に使う
「この・その・あの」の最も基本的な使い方は「現場指示」と呼ばれ、指しているものが実際に会話の場に存在する場合です。このときは物理的な距離だけでなく、話し手と聞き手がどこにいるかも選択に影響します。
2人が向かい合って別々の位置に立っている場合、空間をまず3つの領域に分けて考えることができます。
- 話し手側:この
- 聞き手側:その
- 話し手と聞き手の両方から比較的遠い:あの
この考え方は「近・中・遠」と機械的に覚えるより実用的です。「その」は必ずしも一定の中間距離を表すのではなく、「相手側にある」という意味で使われることが多いためです。
「この」の使い方|話し手の近くや、今まさに指している対象
「この」は、話し手の近く、手元、または心理的に今注目しているものを指します。実際の会話では、商品を手にして店員に尋ねるとき、机の上の資料を指すとき、目の前のものを紹介するときなどによく使われます。
- 例文:このケーキを一つください。
かな:このケーキをひとつください。
意味:このケーキを一つください。
ケーキが話し手の目の前にあり、直接指定しているため「この」を使います。 - 例文:このカードは使えますか。
かな:このカードはつかえますか。
意味:このカードは使えますか。
カードを話し手が持っている、または自分側に置いている場合、「このカード」が最も自然です。 - 例文:この写真を見てください。
かな:このしゃしんをみてください。
意味:この写真を見てください。
写真が話し手の手元にある、または今まさに話題として提示されているため、「この」で指定します。
「その」の使い方|相手側のものを指すほか、直前に出た情報も受けられる
「その」の現場での基本的な使い方は、聞き手側にあるものを指すことです。店員と客がカウンター越しに話している場合、客が手に持っている商品は、店員にとって「その商品」になりやすいといえます。
「その」には、文脈上の非常に重要な使い方もあります。誰かがある店や出来事、人物を直前に話題に出し、もう一方が続けて同じ対象について話すときにも、「その+名詞」がよく使われます。この場合、実際の距離は関係なく、前に出てきた情報を受けています。
- 例文:その傘はお客様のですか。
かな:そのかさはおきゃくさまのですか。
意味:その傘はお客様のものですか。
傘が聞き手側にあるため、話し手は「その傘」を使います。 - 例文:その紙に名前を書いてください。
かな:そのかみになまえをかいてください。
意味:その紙に名前を書いてください。
紙が聞き手の近くにあるため、「その紙」と言えば記入する紙を直接示せます。 - 例文:A:昨日、新しいカフェに行きました。
かな:きのう、あたらしいカフェにいきました。
意味:昨日、新しいカフェに行きました。
B:そのカフェは駅の近くですか。
「あの」の使い方|両者から離れているもの、または双方がもともと知っている対象
その場で遠くにある建物、看板、人などが見えている場合は、「あの」を使えます。話し手と聞き手が同じ側に立って遠くの対象を見ている状況が、最も典型的な例です。
「あの」にはもう一つ実用的な文脈上の使い方があります。それは、話し手と聞き手の両方が知っている、または覚えている過去の人物・場所・出来事を指す場合です。このときの「あの」が表すのは実際の距離ではなく、「双方の記憶の中で、どれのことか分かっているもの」です。
- 例文:あの建物は何ですか。
かな:あのたてものはなんですか。
意味:あの建物は何ですか。
建物が話し手と聞き手の両方から離れているため、「あの建物」を使います。 - 例文:あの青い看板の店です。
かな:あのあおいかんばんのみせです。
意味:あの青い看板の店です。
2人が一緒に少し離れた場所にある店を見ているため、「あの」で指定するのが自然です。 - 例文:去年一緒に行ったあの店、覚えていますか。
かな:きょねんいっしょにいったあのみせ、おぼえていますか。
意味:去年一緒に行ったあの店、覚えていますか。
店は今その場にありませんが、双方に共通の経験があるため、「あの店」には「記憶の中のあの店」という感覚があります。
「その」と「あの」はどちらも「那個」と訳されるけれど、実際には何が違う?
中国語の「那個」はさまざまな状況を含められますが、日本語では対象と話し手・聞き手との関係をさらに区別します。対象がその場にある場合、「その」は通常聞き手側にあるものを指し、「あの」は話し手と聞き手の両方から比較的離れたものを指します。対象が目の前にない場合は、空間的な距離ではなく、「その情報がどう会話に入ってきたか」が判断基準になります。「その」は直前に出てきた人物や物事を受けることが多く、「あの」は双方がもともと知っているもの、一緒に経験したもの、または互いに印象に残っている対象に使われることがよくあります。
そのため、「その店」と「あの店」はどちらも中国語では「那間店」と訳せますが、前提は異なります。相手が初めて紹介した店について続けて質問する場合は通常「その店」を使います。一方、2人が去年一緒に行ったことがあり、どの店か互いに分かっている場合は「あの店」を使えます。日本語研究でも、「その」は前文との照応と関連づけて論じられることが多く、「あの」は双方の共通経験にある対象を指すことができます。
| 比較項目 | 「その+名詞」 | 「あの+名詞」 |
| その場での位置 | 聞き手側に近い | 話し手・聞き手の両方から離れている |
| その場にない場合 | 直前の文脈で出てきた情報を受けることが多い | 双方がもともと知っている、または共通して覚えている対象を指すことが多い |
| 相手がもともと知っているか | 必ずしもそうではなく、今初めて聞いた場合もある | 通常、双方が何を指しているのか識別できることが前提 |
| 会話上の感覚 | 「さっき出てきたその……」 | 「みんな分かっているあの……」 |
| よく使われる組み合わせ | その話、その店、その人、その件 | あの店、あの人、あの時、あの日 |
| 中国語でよくある訳 | 那個…… | 那個…… |
| 判断方法 | 情報が前文や聞き手側から来ているかを見る | 遠くの対象か、共通の記憶かを見る |
▌相手が今言ったばかりの情報は、通常「その」で受ける
「その」は必ずしも実際の距離と関係があるわけではありません。人物、場所、出来事などが直前の会話に登場し、そのまま同じ対象について話を続ける場合、「その+名詞」がよく使われます。この場合、中国語の「剛剛說的那個……」に近く、重要なのは対象がどこにあるかではなく、前に出てきた情報を現在の文に受け直していることです。
- 例文:その話、誰から聞きましたか。
かな:そのはなし、だれからききましたか。
意味:その話は誰から聞きましたか。
前の会話ですでにある話題が出ているため、「その話」で直前の内容を受けています。ここでの「その」には空間的な距離の意味はなく、「さっき出てきたその話」を表しています。
▌双方がもともと知っていることには「あの」を使える
「あの」は、話し手と聞き手の両方から空間的に離れた対象だけでなく、双方がもともと知っている人物・場所・出来事について話すときにも使えます。一緒に行った場所、共に経験した出来事、説明し直さなくても誰のことか分かる人物などが典型です。この場合の「あの」には、「以前のあれ、互いに分かっているあれ」という感覚があります。
- 例文:去年一緒に行ったあの店、覚えていますか。
かな:きょねんいっしょにいったあのみせ、おぼえていますか。
意味:去年一緒に行ったあの店、覚えていますか。
この店は現在目の前にありませんが、2人が以前一緒に行ったことがあり、どの店なのか双方が分かっているため、「あの店」を使えます。ここでの「あの」は実際の距離ではなく、共通の記憶を指しています。
▌もともと一方しか知らない場合は、通常まず「その」で受ける
人物や場所について、もともと話し手だけが知っていて、聞き手は今の会話で初めて知った場合、通常はまず「その」で新しく出てきた情報を受けます。いきなり「あの」を使うより自然です。「あの」には、双方がもともとその対象を識別できるという前提が生じやすいため、会話に今入ったばかりの情報にはその共通知識がありません。
- 例文:その店、おいしかったですか。
かな:そのみせ、おいしかったですか。
意味:その店、おいしかったですか。
前の文で初めて新しいラーメン店に行ったことが話題に出ており、聞き手はもともとどの店なのか知りません。そのため、前文を受ける「その店」が最も自然です。「あの店」にすると、双方が以前からその店を知っていたように受け取られやすくなります。
日本語の「どの」はどう使う?複数の選択肢から「どれか」を尋ねる
「どの」は「どの……」という意味で、特定の範囲の中から一つの対象を尋ねるときに使います。「この・その・あの」と同じく、後ろには必ず名詞が必要です。
複数の電車が見えていれば「どの電車」、棚に複数の商品が並んでいれば「どの商品」、写真に複数の人が写っていれば「どの人」と尋ねられます。
「どの」の使い方①|複数の物のうちどれかを尋ねる
- 例文:どの料理がおすすめですか。
かな:どのりょうりがおすすめですか。
意味:どの料理がおすすめですか。
メニューに複数の選択肢があり、「どの料理」でその中の一つを示してもらいます。 - 例文:どの電車に乗れば新宿に行けますか。
かな:どのでんしゃにのればしんじゅくにいけますか。
意味:どの電車に乗れば新宿に行けますか。
電車そのものが何かを尋ねているのではなく、複数の電車の中のどれに乗るのかを尋ねています。 - 例文:どのサイズが一番大きいですか。
かな:どのサイズがいちばんおおきいですか。
意味:どのサイズが一番大きいですか。
「どの」の後ろに、比較したい名詞「サイズ」を直接続けています。
「どの」の使い方②|人について尋ねるときは「どの人/どの方」
「どの人」は「どの人」という意味で、文法的には問題ありません。ただし、正式な接客場面や丁寧さを高める必要がある場面では「どの方」を使えます。
- 例文:田中さんはどの人ですか。
かな:たなかさんはどのひとですか。
意味:田中さんはどの人ですか。
目の前に複数の人がいる場合、「どの人」でそのうちの一人を指定できます。 - 例文:担当者はどの方ですか。
かな:たんとうしゃはどのかたですか。
意味:担当者はどの方ですか。
「方」は「人」より丁寧な言い方で、仕事や接客の場面に適しています。 - 例文:写真の中で、先生はどの方ですか。
かな:しゃしんのなかで、せんせいはどのかたですか。
意味:写真の中で、先生はどの方ですか。
人物の範囲が写真の中とはっきりしているため、「どの方」でその中の一人を尋ねています。
日本語の「この・その・あの・どの」と「これ・それ・あれ・どれ」は何が違う?
「この・その・あの・どの」と「これ・それ・あれ・どれ」は、同じ「こ・そ・あ・ど」の指示体系に属しており、距離の関係もおおむね共通しています。本当に違うのは、文の中で果たす役割です。「この・その・あの・どの」は後ろの名詞を修飾するため、単独で文中に置くことはできません。一方、「これ・それ・あれ・どれ」はそれ自体が一つの物を表せるため、後ろに名詞を続ける必要がありません。
最も簡単な判断方法は、物の名前を実際に言うかどうかを見ることです。「この本」のように「本」という名詞を言うなら「この本」を使います。すでに本について話していることが分かっていて、単に「これ」と答えたいなら「これ」を使います。同じように、「どのかばん」は「どの+名詞」ですが、名詞を省略して「どれ」と尋ねる場合は「どれ」です。東京外国語大学の指示詞の整理でも、この2つのグループは「もの」と「名詞を修飾する形」として分けられています。
| 機能 | +名詞の形 | 単独で使う形 | 中国語での概念 | 例 |
| 話し手に近い | この+名詞 | これ | 這個……/這個 | この本/これ |
| 聞き手に近い | その+名詞 | それ | 那個……/那個 | その本/それ |
| 双方から離れている | あの+名詞 | あれ | 那個……/那個 | あの本/あれ |
| どれかを尋ねる | どの+名詞 | どれ | 哪個……/哪個 | どの本/どれ |
後ろに名詞を続ける場合は「この/その/あの/どの」を使い、名詞を省略する場合は「これ/それ/あれ/どれ」に変えます。そのため、「これ本」や、単独で「どのですか」と言うことはできません。2つのグループは中国語訳だけを見て自由に入れ替えられるものではありません。
▌名詞を言う場合は「この・その・あの・どの」
「この・その・あの・どの」は代名詞ではなく、名詞の前に直接置き、どの対象を指しているのかを示す語です。そのため、文の中で名詞を実際に言うなら、「この本」「その店」「あの人」「どの電車」のような形を使います。「これ・それ・あれ・どれ」をそのまま名詞の前に置くことはできません。
- 例文:この本はいくらですか。
かな:このほんはいくらですか。
意味:この本はいくらですか。
文の中ですでに名詞「本」を言っているため、その前には「この」を使います。「これ本はいくらですか」とは言えません。「これ」はそれ自体ですでに物を表せるため、さらに直接「本」を続けることはできないからです。
▌名詞を省略したら「これ・それ・あれ・どれ」に変える
前の会話ですでに何について話しているかが明確になっていれば、同じ名詞を何度も繰り返さず、「これ・それ・あれ・どれ」でその物を直接表すことができます。このグループは単独で使えるため、答えでは「これです」「それです」「どれですか」といった形がよく現れます。
- 例文:これです。
かな:これです。
意味:これです。
前の質問ですでに「どのかばんが田中さんのですか」と尋ねていれば、話題になっている名詞が「かばん」であることは明確です。答えるときにもう一度「このかばんです」と言う必要はなく、「これ」でかばんを表して「これです」と言えます。
▌「どのですか」は通常「どれですか」にする
「どの」は「この・その・あの」と同じように、後ろに必ず名詞が必要で、単独で「どれ」という意味には使えません。名詞を省略して、単に「どれですか」と尋ねたい場合は、それ自体で物を表せる「どれ」を使います。
- 例文:田中さんのかばんはどれですか。
かな:たなかさんのかばんはどれですか。
意味:田中さんのかばんはどれですか。
ここでは先に名詞「かばん」を言っており、その後は「どれなのか」だけを尋ねればよいため、「どれですか」を使います。「田中さんのかばんはどのですか」とは言えません。「どの」は後ろにもう一つ名詞を続ける必要があり、単独では文が完成しないためです。
「この・その・あの・どの」と「ここ・そこ・あそこ・どこ」も別のもの
「この・その・あの・どの」と「ここ・そこ・あそこ・どこ」は、どちらも話し手と聞き手の位置によって使い分けが変わりますが、指している対象は同じではありません。前者は名詞の前に置いて「どの本・どの店・どの人」なのかを示し、「ここ・そこ・あそこ・どこ」は場所を直接指して、「ここ・そこ・どこ」といった位置を表します。
たとえば、カフェの中にいて「この店」と言う場合は、「この店」という名詞を指しています。一方、「ここ」と言う場合は、焦点が「この場所」に変わります。そのため、「この店は静かです」はこの店について説明しており、「ここは静かです」は今いる場所について説明しています。中国語ではどちらも「這裡/這間」のように表せる場合がありますが、日本語で語を選ぶときは、まず指しているのが名詞なのか場所なのかを判断する必要があります。東京外国語大学でも、この2つのグループはそれぞれ「名詞を修飾する形」と「場所」として分類されています。
| 「こ・そ・あ・ど」 | 名詞を修飾 | 物を指す | 場所を指す | 基本位置/機能 |
| こ系列 | この+名詞 | これ | ここ | 話し手に近い |
| そ系列 | その+名詞 | それ | そこ | 聞き手に近い |
| あ系列 | あの+名詞 | あれ | あそこ | 双方から比較的遠い |
| ど系列 | どの+名詞 | どれ | どこ | どれ/どこかを尋ねる |
3つのグループは同じ基本概念でまとめて覚えられますが、互いに置き換えることはできません。「この店」の「この」には必ず名詞「店」が必要です。「これ」は一つの物を表し、「ここ」は場所そのものを表します。文で示したいものが「名詞・物・場所」のどれなのかを先に見てから距離を判断すると、中国語の「這個、那個、這裡」を見て逐語的に訳すより正確です。
- 例文:この店は何時までですか。
かな:このみせはなんじまでですか。
意味:この店は何時までですか。
「この」の後ろに名詞「店」が続いています。 - 例文:これは何ですか。
かな:これはなんですか。
意味:これは何ですか。
「これ」自体が目の前の物を表しています。 - 例文:ここはどこですか。
かな:ここはどこですか。
意味:ここはどこですか。
「ここ」と「どこ」はどちらも場所を表す表現です。
同じ状況でも「この・その・あの」に変えると、ニュアンスはどう変わる?
同じ「店」について話していても、「この店」「その店」「あの店」と変えると、変わるのは店そのものではなく、話し手がその店を現在の会話の中でどう位置づけているかです。「この店」は、話し手が今いる場所や接している範囲にその店を置きます。「その店」は、聞き手側の情報として扱う、または相手が直前に話した内容を受けます。「あの店」は、双方から離れた店、または互いにどの店かすでに分かっている対象として扱います。
そのため、中国語ではすべて「那間店」と訳せるからといって、「その/あの」のどちらでもよいわけではありません。この店が「今いるこの店」なのか、「さっき出てきたその店」なのか、それとも「双方が覚えているあの店」なのかを見る必要があります。
「この店」|今目の前にある、または現在いるこの店
話し手が店内にいる、店の前に立っている、または目の前の店を指している場合、「この店」はその店を話し手の現在の範囲に置きます。重要なのは「今接しているこの店」です。
- 例文:この店、前にも来たことがあります。
かな:このみせ、まえにもきたことがあります。
意味:この店、前にも来たことがあります。
話し手が今この店の中、または店の近くにいるため、「この店」を使います。ここでの「この」は、目の前の店をそのまま話題にしています。
「その店」|相手がたった今話した店
店がその場になく、聞き手が今話題に出したばかりで、もう一方が続けて質問する場合は、「その店」が自然です。ニュアンスとしては「さっき言っていたその店」に近くなります。
- 例文:その店、駅から近いですか。
かな:そのみせ、えきからちかいですか。
意味:その店、駅から近いですか。
前に誰かがすでにある店について話しており、この文では続けて場所を尋ねています。「その店」は実際の中距離を表しているのではなく、直前に会話へ出てきた情報を受けています。
「あの店」|双方がどの店なのか知っている
2人が以前一緒に行ったことのある店について、後から再び話す場合、店がまったく目の前になくても「あの店」を使えます。この場合、「前に行ったあの店、互いに分かっているあの店」という感覚があります。
- 例文:あの店、まだ覚えていますか。
かな:あのみせ、まだおぼえていますか。
意味:あの店、まだ覚えていますか。
「あの店」には、双方にすでに何らかの共通の記憶や認識があることが前提として含まれます。初めて知らない店を紹介しているのではなく、お互いが知っている対象をもう一度会話に呼び戻しています。
3つを並べて見ると、「この店」は話し手に今近い店、「その店」は相手や前文から会話に入ってきた店、「あの店」は双方に共有された記憶のある店を表しやすいことが分かります。中国語では「這間/那間」だけで表現される場合でも、日本語では話し手・聞き手・対象の関係まで指示詞に反映されます。
日本語「この・その・あの・どの」のよくある間違い|中国語の「這個・那個」だけで訳さない
中国語の「那個」は非常に広い範囲をカバーしますが、日本語では会話上の位置、情報源、共通の記憶に応じて「その」と「あの」を使い分けます。逐語訳をすると、特にここで選び間違えやすくなります。
▌間違い①|「その」を固定的に中距離と覚える
「その」が中間的な位置にあるものを指すことは確かにありますが、2人が向かい合っている状況では、「相手側」と理解するほうが実用的です。
Aが本を持っていて、向かい側にいるBが尋ねる場合は次のように言えます。
✅ その本は面白いですか。
かな:そのほんはおもしろいですか。
意味:その本は面白いですか。
2人の実際の距離が非常に近くても、本がA側の空間にあるため、Bは「その」を使います。
▌間違い②|今初めて聞いた情報にいきなり「あの」を使う
A:昨日、新しいホテルに泊まりました。
昨日、新しいホテルに泊まりました。
❌ B:あのホテルはどうでしたか。
✅ B:そのホテルはどうでしたか。
そのホテルはどうでしたか。
Bはもともとそのホテルを知っていたわけではなく、Aが今初めて話題に出した情報です。そのため、「そのホテル」で受けるほうが自然です。
▌間違い③|人を直接「これ/それ/あれ」と呼ぶ
人物を紹介するときは通常「この人」「その人」「あの人」と言い、正式な場面では「この方」「その方」「あの方」を使えます。
✅ あの人は店長です。
かな:あのひとはてんちょうです。
意味:あの人は店長です。
人を直接「あれ」で指すと、不自然だったり失礼に聞こえたりすることがあります。人と一般の物をまったく同じように扱わないようにしましょう。
日本旅行で役立つ「この・その・あの・どの」|買い物や道案内でもよく使う
「この・その・あの・どの」は旅行中にも非常によく出てきます。注文するときには「この料理」、店員が客の手元の商品を確認するときには「その商品」、2人で遠くを見るときには「あの建物」、複数の選択肢から尋ねるときには「どの電車」と言えます。
実用的なのは、物の正式な名称が分からなくても使える点です。対象が見えていれば、「この/その/あの」と簡単な名詞を組み合わせるだけで、何について尋ねたいのかを示せます。
▌場面①|レストランでメニューを指して注文する
A:この料理は辛いですか。
このりょうりはからいですか。
この料理は辛いですか。
B:少し辛いですが、人気があります。
すこしからいですが、にんきがあります。
少し辛いですが、人気があります。
📌 文法ポイント:メニューが注文する人の目の前にあり、その中の一品を直接指しているため「この料理」を使います。
▌場面②|衣料品店で客が持っている商品を確認する
A:このシャツ、別のサイズはありますか。
このシャツ、べつのサイズはありますか。
このシャツ、別のサイズはありますか。
B:その商品でしたら、MとLがあります。
そのしょうひんでしたら、エムとエルがあります。
その商品でしたら、MとLがあります。
📌 文法ポイント:客が持っているシャツは、客にとっては「このシャツ」ですが、向かい側にいる店員にとっては「その商品」になります。同じ物でも、誰が話しているかによって指示詞が変わります。
▌場面③|駅でどの電車に乗ればよいか尋ねる
A:渋谷に行くには、どの電車に乗ればいいですか。
しぶやにいくには、どのでんしゃにのればいいですか。
渋谷に行くには、どの電車に乗ればいいですか。
B:あのホームから出る電車です。
あのホームからでるでんしゃです。
あのホームから出る電車です。
📌 文法ポイント:「どの電車」で複数の列車から目的のものを尋ね、「あのホーム」で双方から見えているものの、現在地から少し離れたホームを指しています。
文化知識の補足:
- 日本語の「こ・そ・あ」は、中国語の「這/那」と完全に一対一で対応するわけではありません。特に「そ」系列は聞き手側の領域と深く関係するため、同じ物でも話す人が変われば指示詞も変わることがあります。
- 「あの人」「あの方」は遠くにいる人物だけでなく、双方が知っている人物を指すこともあります。会話で「あの人、最近どうしてる?」と言えば、通常は話し手と聞き手の両方が誰について話しているのか知っていることが含意されます。
- 「その話」「その件」「その場合」は仕事やフォーマルな会話で非常によく使われます。このような「その」には空間的な距離の意味はほとんどなく、前に出てきた内容を現在の文に受け直す働きがあります。
日本語「この・その・あの・どの」と韓国語「이・그・저・어느」はどう対応する?
◆ 似ている文法:韓国語「이/그/저/어느」
韓国語にも、日本語の「こ・そ・あ・ど」と似た指示体系があります。「이」は話し手に近いもの、「그」は聞き手の近くにあるものや前に出てきた対象、「저」は双方から離れているもの、「어느」は「どの」を尋ねる場合に使われます。
空間的な指示では、2つの言語は非常に対応させやすいといえます。ただし、共通の記憶について話す場合には注意が必要です。日本語では「あの」で双方が知っている出来事を呼び戻すことがありますが、韓国語ではこの場合「그」を使うことが多く、「あの」をすべて「저」と訳せるわけではありません。
- 例文:이 가방은 얼마예요?
ローマ字:i ga-bang-eun eol-ma-ye-yo?
日本語:このかばんはいくらですか。
「이 가방」は話し手の近くにあるかばんを表し、日本語の「このかばん」とほぼ対応します。 - 例文:그 가게는 어디에 있어요?
ローマ字:geu ga-ge-neun eo-di-e i-sseo-yo?
日本語:その店はどこにありますか。
「그」は前に出てきた店を受けることができ、日本語の文脈上の「その」に近い働きをします。 - 例文:저 건물은 뭐예요?
ローマ字:jeo geon-mul-eun mwo-ye-yo?
日本語:あの遠くにある建物は何ですか。
「저」は話し手と聞き手の両方から離れた実際の対象を指し、日本語の「あの建物」に近い表現です。
◆ 「この・その・あの・どの」との主な違い:
空間的な距離では、日本語の「この/その/あの」と韓国語の「이/그/저」はよく似ています。疑問の「どの」も「어느」に対応することが多い表現です。違いがはっきり出やすいのは共通の記憶です。日本語の「去年行ったあの店」は「あの」で双方が覚えている店を表せますが、韓国語では通常「작년에 갔던 그 가게」とし、「저」ではなく「그」を使います。
「この・その・あの・どの」は一見すると初級レベルの4つの語にすぎませんが、本当に混乱しやすいのは「その」と「あの」です。目の前に対象がある場合は、まずどちら側に近いかを見ます。対象がその場にない場合は、それが今話題に出たばかりなのか、それとも双方がもともと知っているものなのかを考えます。
もう一度形を確認しておけば十分です。「この・その・あの・どの」の後ろには名詞が必要です。名詞を言わない場合は、「これ・それ・あれ・どれ」に変えます。旅行中にメニュー、ホーム、商品、看板などを見る場面では、この2つのグループを一緒に使う機会が非常に多くあります。
よくある質問
「この・その・あの・どの」は、いずれも名詞の前に置く指示詞です。「この」は話し手に近いもの、「その」は聞き手に近いものや前文を受ける場合、「あの」は双方から離れたものや双方が共通して知っているもの、「どの」はどれなのかを尋ねる場合に使います。
その場での会話では、「その」は通常聞き手側に近いもの、「あの」は話し手と聞き手の両方から離れたものを指します。対象が目の前にない場合、「その」は直前に出てきた情報を受けることが多く、「あの」は双方がもともと知っている、または共通して覚えている人物や物事を指すことが多くあります。
「この・その・あの・どの」の後ろには必ず名詞が必要です。たとえば「この本」「どの店」のように使います。「これ・それ・あれ・どれ」はそれ自体で物を表せるため、「これは何ですか」「どれですか」のように単独で使えます。
日本語の指示詞は、話し手の位置によって変わるためです。商品を客が持っている場合、客にとっては自分の近くにあるため「この商品」になります。一方、向かい側にいる店員から見ると、その商品は聞き手側にあるため「その商品」となります。
いいえ。「あの」は空間的に双方から離れた対象だけでなく、双方が共通して知っている、または覚えている人物や物事にも使えます。たとえば「去年一緒に行ったあの店」の店は現在その場にはありませんが、「あの」は双方が覚えているその店を指しています。